がんと最先端治療

がんと最先端治療B
 
5.再発進行期がんへの取り組み

これまでに私たちは再発進行期がんの方々に対し、多くの取り組みをしてきました。元々放射線治療は「切っても治らない」と外科系から言われた患者さんたちに用いられることが多かったことも事実です。がんが進行してくると痛みをはじめとした様々な体の不具合が生じてきます。これらの症状は呼吸困難感や麻痺や誤嚥といった神経症状など日常生活の質(QOL)を極端に悪化させる原因となります。

下の表は約10年前に従来の緩和的放射線治療を行なった患者さんの成績です。

 
  著明改善  改善  不変増悪
疼痛
29%
47%
24%
呼吸困難
18%
62%
20%
神経症状
21%
33%
46%
 
従来の放射線治療では照射範囲が大きいため治療に伴う急性障害が避けられなかったこと、一度照射された範囲への二度目の治療は困難であったこと、数週間という治療期間が必要とされ効果発現に時間がかかったことや効果発現自体に限界があったことなどが問題でした。そこで、最近可能となった高度先進医療の一つである「体幹部定位照射」という技法を用いて症状緩和を目指した結果、以下のような改善を認めました。
 
 
著明改善
改善
不変
局所痛
25%
54%
21%
放散痛
14%
86%
0%
呼吸困難
27%
64%
9%
誤嚥・嗄声
50%
25%
25%
麻痺
47%
40%
13%
 
実例を示します。
気管浸潤を伴う中枢型肺がんです。結核の があり手術不能の症例です。定位的照射後、3ヶ月後のCTで病変は完全に消えています。臨床病状の咳も消失しました。
 
 
肺癌傍脊髄転移の症例です。脊髄の傍に椎体を破壊しながら発育する転移病巣を認めます。左肋間神経に浸潤し、強い神経痛を伴っています。定位的照射の施行後、3ヶ月で転移病巣は消失し、溶けた椎体の部分には骨が再生してきています。肋間神経痛は軽快し、脊椎の崩壊に伴う脊髄麻痺が予防できました。
 
 

肺癌、右腋窩リンパ節転移の症例です。右腋の下から鎖骨の裏側にかけてリンパ節に、るいるいと転移病変が認められます。腕神経叢への浸潤のため、右手のしびれと脱力感があり、早くもう一度ペンを持ちたいという強い希望をもっていました。そのため、早期に効果が期待できる定位照射を施行しました。翌日には麻痺がとれ、字が書けるようになりました。治療後3ヶ月で病変は消失しています。

肺癌、右腋窩リンパ節転移の症例です。右腋の下から鎖骨の裏側にかけてリンパ節に、るいるいと転移病変が認められます。腕神経叢への浸潤のため、右手のしびれと脱力感があり、早くもう一度ペンを持ちたいという強い希望をもっていました。そのため、早期に効果が期待できる定位照射を施行しました。翌日には麻痺がとれ、字が書けるようになりました。治療後3ヶ月で病変は消失しています。

 
 
胃癌、副腎転移の症例(外科医)です。腹腔神経叢浸潤に伴う激しい痛みのために数百ミリのモルヒネを必要としていました。治療後廃薬でき仕事に復帰されました。
 
 
これ以外にも乳癌末期で両側視神経障害のため失明された方が、死ぬ前にぜひもう一度娘さんたちの顔をみたいという希望をもたれ紹介されたケースもありました。定位照射の翌日、お嬢さんたちの笑顔をしっかりと見ることができたと報告を受けました。

このように、進行期がんの転移病巣にピンポイントの照射を行うと、脳でも脳以外でも、3割は消失し、9割に効果を認めました。また、7ヶ月ほどの予後を認めました。しかし、30%の完全緩解率は十分な効果とは言い切れないこと、周辺正常組織へのダメージは無視できないため、再燃したときには障害の発生が避けられないこと、さらにもっと重要なこととして全身にがんが進展することを抑えきれないことなどの課題があり、X線治療に限界があることがわかりました。

 
 がんと最先端治療Cへ